こんなやり取り…していませんか?
住宅ローンの審査を申込する際に、意外と気になるのがクレジットカードの存在です。
僕も銀行員の頃、お客さんや不動産会社から住宅ローンの審査上でクレジットカードがどう影響しているのかよく質問を受けていました。
曖昧なままにしている人も多いのですが、何の影響もない場合が大半である一方、審査可否や適用金利に関係してくる場合もあります!
そこで、住宅ローン審査におけるクレジットカードの立ち位置について、整理してみました。
住宅ローン選びで無駄に損をしないよう、しっかりとクレジットカードの取扱いも理解しておきましょう!
なお、クレジットカードの住宅ローン審査への影響度合いは金融機関毎で変わってきます。
このページでは、僕が勤めていた銀行ベースで話を進めていきます。基本的な考えは大きく変わりませんが、詳細の取扱いは各金融機関で異なることをご承知置きください。
このページの目次
住宅ローンの審査上は、クレジットカードは大きく3つに分類される!
クレジットカードを複数持っているんですけど、住宅ローンの事前審査の前には解約した方が良いんですか?
ざっくりとこういう聞かれ方をよくされましたが、
これだけでは何とも回答し難いです。
というのも、住宅ローンの審査では、機能によってクレジットカードに対する見方が異なるからです。
通常、クレジットカードの機能は大別すると2つに分かれます。
1つは買い物の際に、現金で支払うショッピング機能。
もう1つは、クレジットカードから現金を引き出すキャッシング機能です。
さらに、住宅ローン審査の場合には、ショッピング機能における支払いは一括払いなのか分割払い(リボ払い含む)かで2つに分類されます。
つまり整理すると、住宅ローンの審査では、クレジットカードは大きく3つに分類されているのです。
住宅ローン審査上のクレジットカードの分類
- ショッピング機能の一括払い
- ショッピング機能の分割払い(リボ払い含む)
- キャッシング機能
それぞれの機能次第で、審査や金利条件への影響有無が変わってきますので、
まずはこういった分類をされていることを押さえておきましょう。
以下、ケース毎に詳細を説明していきます。
【本論】ケース毎の審査や金利条件への影響、対応を確認しよう!
では実際に、ケース毎の影響度合いや、取るべき対応を見ていきましょう。
4ケースに分かれていますが、ご自身が該当するのはどれか一つだけのはずなので、
そのケースだけ読んでいただければOKです。
ケース➀:ショッピング機能の一括払いのみを利用している
僕の経験上、多くの人はこのケースに該当しています。
通常のショッピングであれば、クレジットカードでも一括払いのみを利用することが大半ですよね。
この場合は、クレジットカードを持っていないのとほとんど変わりありません。
つまり、クレジットカードを10枚持っていようと、20枚も持っていようと特段何かする必要はありません。
審査上も“基本的には“影響がありません。
“基本的には“影響がないというのは、例外も一部あります。
毎月50万円とか100万円とか、異常な支払いを続けている場合です。
大きな買い物を年に1回などは影響がありませんが、継続して大きな支払いがあると「何かあるんじゃないか?」と変に怪しまれることがあります。
もし心当たりがあるのであれば、念のため申込時に口頭ベースでも構わないので申告しておいた方が無難です。
といっても、この例外もほとんど気にしなくて良いレベルの話です。
ケース②:使っていないリボ払い枠、キャッシング枠がある
一番損をしがちなのが、このケースです。
全く利用してはいないけど、リボ払い枠やキャッシング枠が数十万円、クレジットカードに付随しているケースです。
このケースの場合、信用情報面ではマイナス評価されない(むしろ、カード会社から信用されているという意味でプラス評価かもしれません)のですが・・・
審査上の返済比率やキャッシュフローの計算が圧倒的に不利になります。
借入枠があるということは、その分いつでも借入が可能な状態ですので、「住宅ローンの返済額+クレジットカードのリボ払いやキャッシング枠に応じた返済額」が審査上の返済額となってしまうのです。
これが、実は結構インパクトが大きいんですね!
借入枠の分が融資金額から引かれるのではなく、借入枠に応じた返済額が返済比率の計算に加算される点が厄介なんです。
たとえば、年収500万円で、その他借入がなければ3,200万円まで借りれる人がいるとします。
この人が、100万円のキャッシング枠を持っていると借入上限額がどうなるかと言うと、
100万円減額の「3,100万円」ではなく・・・
大体「2,700万円」程度にまで減額されます!
住宅ローンの100万円であれば、35年など長期間のうちの1年分の返済しか審査上の負担になりませんが、キャッシングの場合には短期の返済が求められますので、100万円の枠があると月2万円→年間で24万円程度の返済負担を計算に見込む必要があるからです(リボ払いの場合も同様です)。
年24万円の返済負担というと、なんと住宅ローンベースでは500万円前後も影響が出てきてしまうのです。
このように、リボ払い枠やキャッシング枠は利用していなくても、枠があるだけで住宅ローン審査の足を引っ張ります。
そうなんです。本人は利用するしたこともなければ、利用するつもりもない、ましてや作った記憶さえなくても足かせになってしまうのがこれらの借入枠なんですね。
なので、不要な借入枠は住宅ローンの審査前には確実に解約しておきましょう!
また、手続き的に間に合わない場合や、審査直前に解約した場合には、金融機関にその旨を必ず申告しましょう!
また、返済比率は、審査面だけでなく、金利引き下げの条件になっていることもあります。
キャッシング機能の解約だけしておけば、最低水準の金利を適用できたのに・・・。
なんていう案件は実際、結構あります。
しかし、申込人からの申告がなければ、他の借入については言及することもできないので救済できないのです。
ケース③:ショッピング機能の分割払いやリボ払い、キャッシング機能を利用している
続いては、ちょっと審査目線が厳しくなってくるケースです。
どういった点で厳しいのかは、視点が2つあります。
1つは、ケース②の場合と同じく、返済負担が重くなってしまうことです。
繰り返しになりますが、クレジットカードの支払いが100万円残っているのと、住宅ローンを100万円を多く借りるのは意味合いが全く違います。
住宅ローン以外の借入がある場合は、かなりディスアドバンテージを背負ったスタートになってしまうのです。
もう1つは、借金癖の強い人だと見られることです。
身内や友人間での貸し借りでもいえることですが、
お金を貸す立場からすると、しょっちゅうお金を借りている人ってあまり信用できないですよね。
程度も重要で、数万円ならまだしも100万円近く借入がある場合、計画性を疑われることとなります。
マイカーローンや教育ローンといった目的が明確なローンと違い、資金使途が自由なリボ払いやキャッシングは、ややもすると“お金にだらしない”印象が付いてきてしまいます。
いずれの視点からも、リボ払いやキャッシング機能は事前審査の前に完済・解約しておくことをお勧めします。遅くとも本審査前には解約しておきたいですね。
それが難しいのであれば、場合によってはマイホーム購入のタイミングをずらすことも検討すべきです。
また、利用の経緯や内容を金融機関側に伝えておくといくらか良いです。
中身が全く見えない借入と、中身が明確な借入は印象が審査の印象が全く違います。金融機関の審査役も人間で、例外なく誠実な人がタイプですので、結構効果があります。
ケース④:ショッピング機能の分割払いやリボ払い、キャッシング機能で延滞の履歴がある
一気に難易度が上がります。
残念ながら、融資の世界で“延滞”というのはもう犯罪行為に近いんですね。
この場合は延滞履歴が消えるまでおとなしくしているのが賢明です。
クレジットカードの延滞であれば5年後にはCICの個人信用情報が消えますので、信用情報を取り寄せてそのタイミングを確認しておくと良いでしょう。
なお、「うっかり1回だけ支払い損ねた」場合であればまだ救いはあります。
信用情報上も“異動”という表記はないので、金融機関やその担当者によっては認めてくれる場合があります。
ただ、この場合も背景や時期などを金融機関に正直に伝えておいた方が良いですね。とにかく誠意を見せるのが重要です。
【まとめ】住宅ローン審査前にクレジットカード関係でやっておくべきこと
以上、ケース毎に住宅ローン審査においてクレジットカードがもたらす影響と、対処方法をお伝えしてきました。
結局のところ、行うべきことを簡単にまとめると・・・
- 持っているクレジットカードに、借入枠(リボ払い、キャッシング)がないかを確認する。
- 借入枠がなければ問題なし。ショッピングで使い過ぎがある場合のみ、金融機関に一言言っておきましょう。
- 借入枠がある場合には、利用有無に関わらずすぐに解約の手続きを始めるべし。「住宅ローンを借りるにあたって解約する」とはっきりと金融機関に伝える方が得策(できれば申込書にその旨を記載しておく)。
- 延滞履歴がある場合には希望を持たずに履歴消えを待つ。CIC(個人信用情報機関)に申請し履歴を確認、延滞時から5年経過のタイミングを把握しておく。1回うっかりの延滞ならチャンスありなので、経緯を伝えて事前審査にトライ。
これだけやっておけば、住宅ローン審査におけるクレジットカード関係でやっておくべきことはクリアです。
後は金融機関の判断に委ねましょう!
実際のところ、クレジットカードをはじめ個人信用情報関係はブラックボックス!
ここまでつらつらと書いてきましたが、クレジットカードに対する考え方はかなりブラックボックス的な要素が強いです。
住宅ローンの申込書や付属書類などは、金融機関内で色んな人が目にしていますが、
個人信用情報関係は本当に限られた人しか見ることができません。
僕は申込のあった住宅ローン案件を保証会社に審査依頼をする仕事をしていたのですが、各申込人の信用情報だけは実は確認もできないまま審査対応をしていました。審査役からも信用情報についてははっきりしたコメントがもらえませんでした。
もちろん案件によっては生情報を見たことはありますし、勘所については認識していますが、住宅ローン審査の現場にいた僕でさえ、細かい考え方は掴めていないのが正直なところです。
さらに、他の銀行の話を聞いてみると、クレジットカードをはじめ個人信用情報に対する考え方は各行で微妙に違います。
キャッシング枠だろうと未使用であれば返済負担に入れる必要がないという銀行もあれば、ショッピング枠の一括払いも審査対象となるから全クレジットカードを解約すべき(担当者の認識相違もあったかもしれませんが)という銀行もあります。
広く発信されることのない情報なので、恐らく同じ金融機関内でも担当者によって見解が分かれています。
結局ブラックボックス要素が強い以上、答えは分からないので、できることといえば、上記のやるべきことだけ行い、後はリスクヘッジで数を打っておくことです。
つまり、複数行に事前審査を出しておくと良いです。

ブラックボックスに対抗する唯一の手段が事前審査回答なので、特に金利にこだわりたいのであれば、事前審査の複数申込はオススメです。
こちらの記事↑には複数行に事前審査を申込する意義をこれでもか!と書いておりますので、是非あわせて読んでみてください。